## 件名 系統用蓄電池政策の再検証について(予算編成期における留意点) ## 要旨(エグゼクティブサマリー) 本メモは、現在進行している系統用蓄電池への集中的な財政支出について、制度・市場・事業実態の観点から再検証を促すものです。直近、大手商社系子会社の解散や、実体と乖離した大型案件の顕在化など、市場はすでに調整局面に入りつつあります。系統用蓄電池は本来、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の自律分散化を補完する手段であるべきですが、日本では逆に制度的欠陥を覆い隠す装置として機能してきました。予算編成においては、これを前提とした抜本的な見直しが不可欠です。 --- ## 1. 現状認識:なぜ今、系統用蓄電池が拡大しているのか 日本における系統用蓄電池の急増は、技術的必然というよりも、制度設計の結果です。再エネ導入拡大に伴う出力変動、同時発電、周波数調整力低下といった課題に対し、再エネ事業者側の責任を明確化しないまま、系統側で吸収する方針が取られてきました。その調整コストを肩代わりする形で、系統用蓄電池が公共インフラ的に位置づけられています。 この構造では、蓄電池は問題解決装置ではなく、問題の先送り装置になります。 --- ## 2. 海外制度との本質的差異 欧州(特にドイツ・北欧)や米豪市場では、蓄電池は市場参加のための事業装置であり、発電事業者が需給責任を負う前提があります。一方、日本では、再エネの非自律性を前提に系統が全体を支える思想が残っています。この違いを無視した海外成功事例の引用は、政策判断を誤らせる要因となります。 --- ## 3. 直近事例が示す市場の歪み 足元では、以下のような事象が確認されています。 - 系統用蓄電池事業を担っていた商社系子会社の解散 - 実体規模と著しく乖離した大型系統蓄電池計画の流通 - 解散・撤退が決まった後の対外的な事業発表 これらは個別企業の失敗ではなく、補助金・ブランド・制度に依存した事業構造が限界に達している兆候です。 --- ## 4. 予算編成における主要リスク ### (1) 財政リスク 補助金を前提とした案件は、補助制度終了と同時に座礁する可能性が高く、将来的な追加支援要請を招きます。 ### (2) モラルハザード 責任主体が不明確なまま大型案件が成立することで、実体を伴わない事業参入を助長します。 ### (3) 政策信頼性の低下 後年、グリーンウォッシュとして整理される案件が増えれば、脱炭素政策全体への信頼が損なわれます。 --- ## 5. 政策転換に向けた検討方向 今後の予算措置においては、以下の観点が重要です。 1. 系統用蓄電池への一律支援からの転換 2. 発電・蓄電・需要を一体化した自律分散型モデルの優先 3. 再エネ事業者への需給責任・予測責任の段階的付与 4. 補助金採択時の事業実体・運営体制の厳格審査 --- ## 6. 結語 系統用蓄電池は、本来の電力システム改革の代替物ではありません。現在進行している市場整理は、政策が誤っていたことを示すものではなく、修正の機会が到来したことを意味します。予算編成期において、短期的な導入量や対外アピールではなく、中長期の制度整合性と市場自律性を重視した判断が求められます。